月刊「ショパン」表紙とカラーインタビュー

本日発売の月刊ショパンの表紙と巻頭インタビューに取り上げていただいています。

日本を代表するクラシック音楽雑誌のひとつにこのように取り上げていただき、深く感謝をするとともに、より多くの日本の方に知っていただき、興味を持っていただける機会になればとても嬉しいです。

2018年11月12月の日本での公演のおしらせ
詳細はCONCERTページをご覧ください。

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月23日(金) 17:00開演
赤坂区民センター区民ホール
「ピアノとバレエの華麗なる饗演」
吉川隆弘 X 西島数博 X 梶谷拓郎 スペシャルゲスト井脇幸江
ヴェニスに死す / イタリアン・カラーズ

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

クルタークをスカラ座で演奏します。

ここで一つはっきりと申し上げますが、私はスカラ座の団員でも、コレペティでもありません。
何度も言っていますが、相変わらず「スカラ座のピアニスト」と書かれたりしますので。

3月はスカラ座にソリストとして呼ばれて演奏しました。参照

また、たまにスカラ座のオペラの公演でスカラ座管弦楽団のエキストラとして演奏したり参照、スカラ・フィルのピアノを担当しています参照。スカラ座管弦楽団とスカラフィルはメンバーはほとんど同じですが、スカラ座管はスカラ座のオケで主にオペラとバレエ、スカラフィルはスカラ座管弦楽団のメンバーによる自主運営のオーケストラで、オーケストラのコンサートをします。

さて、ミラノ・ムジカ・フェスティバルという現代音楽のフェスティバルが、毎年この時期にあります。
毎年一人の作曲家を主に取り上げるフェスティバルで、去年はサルヴァトーレ・シャリーノでした。毎年スカラフィルのコンサートもあり、去年はバルトークの中国の不思議な役人で弾きました。
今年の作曲家はクルタークです。
クルタークのZwiegesprächという作品のグランドピアノとアップライトピアノを担当します。アップライトピアノをさすったり、グランドピアノの弦をギターのピックで弾いたりして来ます。
楽しみです!

10月21日 20:00 ミラノ・スカラ座
スカラフィルのサイト http://www.filarmonica.it/concerti.php?id=1729&lang=it
ミラノ・ムジカ・フェスティバルのサイト http://www.milanomusica.org/it/sezione-festival/calendario/what-is-the-word/item/3285-teatro-alla-scala-21ottobre.html

ベートーヴェンとナポリ (3) 皇帝

前回前々回とナポリの和音のお話をして来ました。
今日はピアノ協奏曲第5番「皇帝」の第1楽章の一部を取り上げてみます。
下の楽譜は第199小節から第207小節です。

変ロ長調から変ロ短調になり、203小節目で変ハ長調のV7、205小節目前半は変ロ長調における典型的なナポリの和音です。203〜206の4小節の変ハ長調がナポリの調ということですね。
この箇所は、伝統的に少しだけゆっくりと弾かれることがよくありますが、それは、ここでナポリの調になっているからなのですね。
エトヴィン・フィッシャーとフルトヴェングラーは、ナポリの調のはじめの2小節のV7でリタルダンドして、そのあとゆったりしています。(下のヴィデオは7:12からはじまります。ナポリの調は7:20から)

弟子のブレンデルはさらにはっきりとそのように弾いています。

もう一人の弟子、バレンボイムも。

ゼルキンも。

ナポリの調になっている、ということ、あ、ピザの匂いがするね、という感じ、そのために少しテンポを緩めるというのは、説得力のある解釈の一つだと思います。ただ、それが伝統になってしまってそうする方が普通になってしまうと、本末転倒と言いますか、意外性のかけらもなくなってしまうので、テンポや音量以外にも音色、アーティキュレーションなど様々な違った方法も模索されるべきだと思います。例えばアラウやミケランジェリはゆっくりしませんが十分な効果を出していると思います。

注:上の6つの演奏はどれもとても偉大な演奏ですので時間のあるときに是非ともステレオに繋ぐかヘッドフォンかで全曲をじっくり聴いてください。好みはともかく、それぞれ学ぶところの多い演奏です。

この曲は第2主題がオーケストラの提示部では第1主題の変ホ長調に対して変ホ短調と平行調で奏されますが、ピアノの入った第2提示部では第1主題の変ホ長調に対してロ短調で演奏されます。この辺りのテンポの操作もそれぞれの演奏者の(ピアニストと指揮者の)資質をよく表しています。
詳しく見ると、第1主題部が終わり、推移に入ったところ(下の楽譜の第1小節目=126小節)は変ホ長調、5小節目=130小節で変ホ短調になります。2段目の2小節目=134小節のナポリの和音(変へ長調の主和音の第1転回形)を経て変ハ長調になります。

その後、下の楽譜の1小節目=144小節で変ハ長調の属和音が異名同音変換をして、オーケストラは変ハ長調のVソ♭-シ♭-レ♭、ファ♯-ラ♯-ド♯になり、161小節(3段目第2小節)でロ短調の第2主題に入ります。

その後、再び変ハ長調を経て変ロ長調になります。変ハ長調は変ロ長調の半音上の調、ナポリの調です。
ナポリとは関係がないですが、2段目5小節目=166小節での転調はとても大胆ですね。変ハ長調のV、ソ♭-シ♭-レ♭のソ♭がファに、レ♭がレに半音ずつ広がってファ-シ-レになって、変ロ長調になります。ソ♭-シ♭-レ♭は変ロ長調から見ると準固有和音、同主短調変ロ短調のVIの和音ということになりますか。

この変ハ長調という遠隔調が、第2楽章のロ長調に繋がっていくのですね。

蛇足ながら、最後の転調と良く似て聞こえる転調がショパンの3番のソナタの第1楽章にあります。ロ短調から変ロ長調に転調するところです。

学生の時、一緒によく演奏していたクラリネットの友人、今では聖徳学園で教えているので中村克己先生ですね、ご無沙汰しています、に大浦食堂でバタ丼を食べながら、この転調を教えてもらいました。ほとんど真面目な話はしたことがないように思いますが、どのいう流れでそのような話になったのか、ともかくいまでも感謝しています(笑)。対談でもないのに(笑)などと書いて恥ずかしい。

というわけで、学生さんや愛好家の方に少し役に立つのかもしれないと思い、楽聖の3つの名曲を取り上げて見ました。
これらの曲の分析をしたのではなく、小さな要素の一つであるナポリの6度のみを通して見てみました。月光ではある種の効果を求めて使われていたのが、熱情では主要主題の中で使われ、皇帝では作品の骨格の重要な要素として使われるようになっていましたね。ナポリであるということを少し拡大解釈しすぎているかもしれませんが。ナポリであるということを理解するだけではなく、そこでピザの匂いがしてくる、ということを如何に演奏に反映させるかが、演奏する者の楽しい仕事ですね。

ベートーヴェンとナポリ (2) 熱情

ではでは引き続き、ベートーヴェン、今回は熱情です。
ナポリの和音、前回の月光以上に沢山出てきます。
早速そそくさと楽譜を開いてみましょう。
冒頭。

へ短調で始まったのに第4小節目でいきなり変ト長調に転調します。半音上、ナポリの調ですね。
第2主題からもう一つの要素への推移の中で、第42小節アッポッジャトゥーラ(倚音)付き(変イ短調のなかに重変ロ短調の主和音の第1転回形)。

二つ目の第2主題と言えばいいのか、第2主題部の3つの要素の2つ目、53小節に上と同じ和音の転回していない基本形。直後の確保でも繰り返される。

再現部で提示部に出てきたものは全て繰り返されます。
コーダでは218〜219小節、へ短調に変ト長調の主和音の第1転回。

月光では第1楽章冒頭の言わば序奏に当たるところで出て来ていましたが、熱情は主題そのものに出て来ているので印象をより強くしています。

月光の第2楽章にもなかったように、熱情も第2楽章にはナポリの和音は一つもありません。

そして、第3楽章。

そもそも、月光も熱情も第1楽章の冒頭と第3楽章の第1主題に強い関連性があります。
月光第1楽章の始まり


このふたつの音楽の関連はバスの下がって行くところですね。私は最近は第1楽章の2分音符の長さが第3楽章の1小節の長さと同じになるように丁度いいテンポにして弾くことでその関連を強調してみているのですが、なかなか気付いてくれる方はいないようです。さらに第1楽章の三連符がそのまま第2楽章の1小節になるようにもしているのです(第2楽章の冒頭のバスもファ-ミ♭-レ♭-ドと下降の順次進行です)。これらの工夫に気付く人のいないのは、実は最近気付いたのは私だけで当然のことだから、または、あまり効果がなく、意味のない工夫だからなのかもしれません。具体的にそのような工夫をしていることに気付く人がいなくても、そのようにすることで曲全体がより一つにまとまり、求心力とでも言いますか、説得力の強い解釈になっていればいいのですが。何はともあれ、私自身の納得度が高まるというだけでもすでに効用はあるのです。
話は変わりますが、第3楽章のはじめの主題は7小節目にクレッシェンドと書いてあるところまでピアノPなので、スフォルツァートsfはピアノの中のスフォルツァートなのですね。そんなことにも私は最近になって気付きました。ただ、このsfをPの中で弾くことにこだわると、159小節に続く箇所がどうもうまくいかない気もするのです。ここを全部ピアノで弾けるものでしょうか。もう少し消化しないといけませんね。

大きく脱線しました。熱情の第1楽章冒頭の第1主題と、第3楽章の第1主題の関連は正にナポリにあります。第3楽章の第1主題は下の楽譜の1段目最後の小節=第20小節から。2段目の最後の2小節(第24〜25小節)がナポリ。

76小節からの第2主題はナポリの和音から始まります。sfの付いているファ-ラ♭-レ♭はハ短調のナポリです。


このナポリはモーツァルトのハ短調のピアノ協奏曲K.491の3楽章の最後に出てくる下のフレーズとそっくりですね!ベートーヴェンが音量で強調しているのに対して、モーツァルトは繰り返しています。

展開部にも出て来ます。


展開部でも再現部でもコーダでも第1主題が使われるところではナポリが出て来ますから、これでもかというほど出てくることになるのです。

ナポリの和音を多用したのはもちろんベートーヴェンだけではありません。前回もモーツァルトの例を挙げましたが、ショパンもたくさん使っています。ノクターンでもワルツでもたくさん見られますが、最も顕著なのはバラード第1番でしょうか?
驚くべきことに、いきなりナポリの和音から曲が始まります(ト短調のド-ミ♭-ラ♭)。

コーダ215小節の2拍目からのフレーズの始めの4小節は、熱情第3楽章の第2主題やモーツァルトのハ短調協奏曲の上で見たものと同じ旋律です。

曲の頭からナポリの和音というのは珍しいと思いますが、例えばショパンの敬愛していた作曲家、ベッリーニのオペラ「ノルマ」の有名なアリア「清らかな女神よ(Casta diva)」の序奏は、レチタティーヴォに続いてナポリの和音から始まります。

ナポリの和音というだけあって、ナポリの音楽院で学んだシチリア生まれの作曲家が大胆な使い方をしていますね〜。
(続く)

2018年11月12月の日本での公演のおしらせ
全公演で熱情ソナタを弾きます。
詳細はCONCERTページをご覧ください。

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月23日(金) 17:00開演
赤坂区民センター区民ホール
「ピアノとバレエの華麗なる饗演」
吉川隆弘 X 西島数博 X 梶谷拓郎 スペシャルゲスト井脇幸江
ヴェニスに死す / イタリアン・カラーズ

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール