ベートーヴェンのCD

2015年11月に日本で発売になったベートーヴェンのアルバムが去年の年末からイタリアで、今年の1月からアメリカ合衆国とカナダで発売になりました。
去年からイタリアでいくつか批評が出ましたので貼付けておきます。

音楽月刊誌AMADEUS 02/2017 Claudia Abbiati

Gothic Networkというウェブマガジンのようなもの 2017/1/27 Piero Barbareschi
http://www.gothicnetwork.org/articoli/ypsilon-beethoven-nellinterpretazione-di-takahiro-yoshikawa

新聞 Il cittadino 2016/11/2

新聞 Giornale di Brescia 2016/5/1 Marco Bizzarini

 

レコ芸特選!(音について)

11月に発売になりましたドビュッシーのCDがレコード芸術誌12月号で特選をいただきました。高く評価していただきとても嬉しく、これからさらにいいCDを作っていかなければいけないと身の引き締まる思いです。

さて、演奏についてはともかく、録音評の中で、「(ピアノに非常に近いところから取られた音で)そうした生々しさをよしとするのならばよい録音だが、演奏会場で聴く音のバランスとはかなり異なり、(後略)」とありましたので、少しご説明させていただきます。

この生々しさをよしとしております(笑)。


これは今回特選をいただいたドビュッシーではなく、去年発売され惜しくも(?)準推薦に終わったベートーヴェンのCDの紹介のビデオクリップです。イタリアで間もなく発売され、アメリカとカナダでは1月に発売になります。非常に思い入れのあるCDですので各地でどのように評価されるのか興味津々です。

録音について、ここで有名なチェリビダッケのビデオをご紹介します。このブログで既に取り上げたことがあるかもしれません。

音楽の現象学というタイトルのビデオですが、後半で録音について、彼がなぜ録音をしないか、説明しています。
その中で、音量について、小さい部屋で話すのと違い、大きい部屋で大勢の人を前に話す時には自然に声は大きくはっきり話さないと伝わらないという話があり、また、テンポについて、テンポは音響との関係で決まってくるという話があります。残響の多いところではテンポが速過ぎると音が重なるのでゆっくり演奏しないといけない、残響の少ないところではその反対に速めのテンポを取らないと音と音の間に隙間が空いてしまう。絶対的な正解のテンポというのはない、云々。まあ、特別斬新なことは言っていないわけですが、録音について考えると、「難しい」という結論になるのも分らなくはないわけです。

私は自分のレーベルを作っているくらいですからチェリビダッケと同じように考えているのではありません。彼の時代とは違い、私にとって、特に10代の頃は生演奏以上に録音を聴くのが音楽との大きな接点でしたので、いいアルバムを作りたい、という思いもあります。今の若い世代の方にはアルバムという感覚はもうないのかもしれませんが。

もともと音楽は何百人何千人というたくさんの人が並んで座ってじっと動かずみんなで耳を澄まして聴く、という鑑賞スタイルのために書かれたものでもないと思います。録音されて聴くものではない、というのも同じことだと思うのです。本来の聴き方聴かれ方ではなくとも、その媒体、コンサートホールやステレオ機器を通して音楽を楽しむことに特に問題は感じません。チェリビダッケが上のビデオの中で「ブリジット・バルドーが大好きだから彼女の写真を40枚持っているのと、レコードを買い集めるのはわけが違う」と言っているのはよく分りますが。

「いくつものマイクを置いて音に臨場感を持たせるのは馬が左から走って来て右に走っていったのを聴かせるようなもので意味がない」とも言っていますが、今はこういう取り方はあまりしないかもしれません。「音の高低により弦の位置が音像として動く」と録音評にもあるように、今風の録音をしていない僕のCDに馬が右から左に走ったような効果が聴かれます(笑)。

「演奏会場で聴く音のバランス」というのが、最近のCDの「いい録音」のキーワードなのでしょうか。であったとしたら、どの演奏会場がいいのか、という話になってしまわないですか。今時のちょっとしたミキサーには世界の有名なホールの音響を付けることが出来るソフトなんかも入っていて、これもどのようにしてサンプリングをしたのか、疑問です。どのホールでもお客さんの入り具合で残響の長さは変わりますし、一列ずれたり一席右左にずれるだけでぜんぜん音は違いますし、聴いている人の座高によっても変わってくるかもしれません。私には「演奏会場で聴く音」という言葉は一枚の木の葉のようなものに思えるのですが—。

「一枚の木の葉が他の一枚に全く等しいということが決してないのが確実であるように、木の葉という概念が、木の葉の個性的な差異性を任意に脱落させ、種々の相違点を忘却することによって形成されたものであることは、確実なのであって、このようにして今やその概念は、現実のさまざまな木の葉のほかに自然のうちには「木の葉」そのものとでも言い得るような何かが存在するかのような観念を呼びおこすのである。つまり、あらゆる現実の木の葉がそれによって織りなされ、描かれ、コンパスで測られ、彩られ、ちぢらされ、彩色されたでもあろうような、何か或る原形というものが存在するかのような観念を与えるのである。」(フリードリヒ・ニーチェ「哲学者に関する著作のための準備草案」1872∼1873)

なぜこの4曲なのか。

前回は単にベートーヴェンのCDを出しました。というご報告でしたが、このCDについて、なぜこの4曲ですか?と尋ねられることがありますのでお答え致します。
選曲をする時には、コンサートのプログラミングでも同じことですが、同じような曲が並んでいても退屈ですし、全く無関係な曲が並んでいるのも通して聴く意味がないので、各曲に関連があり、バラエティーもあるプログラムがいいのではないかと思っています。ゆっくりした曲だけのCDや激しい曲ばっかりのCDももちろんありえますが。
で、このCDでのバラエティーはといいますと、それぞれの曲の性格が違う、というだけでなく、ベートーヴェンの生涯の異なった時期に作られた作品であるということでしょうか。ベートーヴェンのソナタは32曲それぞれ全く違いますからどれを選んでもヴァラエティーは充分あります。

ピアノソナタ第13番Op.27-1の書かれた1800年頃のベートーヴェン

ではそれぞれの曲の関連ですが、これもコンサートのプログラミングと同じく、まずは調性です。複数の曲を続けて聴く時には、調性のある曲であれば、やはり調性に関連がある方がいいのではないでしょうか。例えばあまり音楽の知識のない人は調性などにはこだわらないし分らない、というのは大きな間違いだと思います。どんな音で終わってどんな音で始まるかは聴いていれば感じるますし、むしろ分らない人ほど敏感かもしれません。
それは近い調であればいいというだけではありません。あえて遠い調を持ってくるということももちろんありえます。。私の1枚目のショパンのCDはショパンのOp. 59の3つのマズルカから始まりますが、この3曲は続けて聴いても自然ですがそれぞれの曲の調性はとても遠いです。下にOp.59-1のマズルカのビデオを貼付けてみました。ひさしぶりに聴いてみると少し違和感もありますが、どういう曲かはとりあえずわかります。

ベートーヴェンのCDの4つのソナタはハ短調、変ホ長調2曲、変イ長調という順でこれは♭3つから4つのとても近い調ですね。それだけではなく、悲愴の第2楽章は変イ長調、Op.27-1の第2楽章はハ短調、第3楽章のアダージョはこれも変イ長調、告別の第2楽章はハ短調とそれぞれ関係しています。また、悲愴の第2楽章の中間部は変イ短調という♭が7つある珍しい調ですがこれはOp. 110の第3楽章の嘆きの歌の一回目の調でもあります。

ピアノソナタ第31番の書かれた1年後、1823年の肖像画

調性だけではなく、これらの曲には共通している動機というのか音形も見られます(聴かれます)。
一例を挙げると、悲愴第3楽章78小節目

Op. 27-1第3楽章アレグロヴィヴァーチェのコーダ冒頭265小節目

Op. 110第3楽章フーガ冒頭

以上3つの箇所で聴かれる上ったり下がったりする音形は似ていないでしょうか?異なる時期に書かれた3つの作品に似た音形が使われているのは興味深いと思いつつ、このように楽譜を貼付けて並べてみると、それで?という気もしなくもないですが、まあ、それぞれ関連がありますね、というだけのことです。他にもありますので、興味のある方は探してみてください。

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2016年5月6月の日本でのコンサートのお知らせ

吉川隆弘ピアノリサイタル
ピアノリサイタル
2016/5/25(水)19:00 西宮市プレラホール
2016/6/3(金)19:00 イタリア文化会館東京 アニェッリホール

プログラム
ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a『告別』
リスト:
巡礼の年第2年『イタリア』より
婚礼、物思いに沈む人、ペトラルカのソネット第104番、ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲
巡礼の年第3年より
エステ荘の糸杉に I:哀歌、エステ荘の糸杉に II:哀歌、エステ荘の噴水

詳細はコンサートページをご覧下さい。

ベートーヴェンのCDを出しました。

前回前々回に引き続き去年の情報ですが、ベートーヴェンのピアノソナタ4曲のCDを出しました。前回ご紹介したイプシロン・インターナショナル株式会社からの1枚目のCDです。

発売時にはこの宣伝葉書がCD店などで配布され、銀座の山野楽器では発売記念イベントランチタイムインストアコンサートも開催されました。

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TAKAHIRO YOSHIKAWA – LUDWIG VAN BEETHOVEN


ベートーヴェン
ピアノソナタ 第8番 ハ短調 Op. 13「悲愴」
ピアノソナタ 第13番 変ホ長調 Op. 27-1「幻想曲風ソナタ」
ピアノソナタ 第26番 変ホ長調 Op. 81a「告別」
ピアノソナタ 第31番 変イ長調 Op. 110

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2016年5月6月の日本でのコンサートのお知らせ

吉川隆弘ピアノリサイタル
ピアノリサイタル
2016/5/25(水)19:00 西宮市プレラホール
2016/6/3(金)19:00 イタリア文化会館東京 アニェッリホール

プログラム
ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a『告別』
リスト:
巡礼の年第2年『イタリア』より
婚礼、物思いに沈む人、ペトラルカのソネット第104番、ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲
巡礼の年第3年より
エステ荘の糸杉に I:哀歌、エステ荘の糸杉に II:哀歌、エステ荘の噴水

詳細はコンサートページをご覧下さい。