レコ芸特選!(音について)

11月に発売になりましたドビュッシーのCDがレコード芸術誌12月号で特選をいただきました。高く評価していただきとても嬉しく、これからさらにいいCDを作っていかなければいけないと身の引き締まる思いです。

さて、演奏についてはともかく、録音評の中で、「(ピアノに非常に近いところから取られた音で)そうした生々しさをよしとするのならばよい録音だが、演奏会場で聴く音のバランスとはかなり異なり、(後略)」とありましたので、少しご説明させていただきます。

この生々しさをよしとしております(笑)。


これは今回特選をいただいたドビュッシーではなく、去年発売され惜しくも(?)準推薦に終わったベートーヴェンのCDの紹介のビデオクリップです。イタリアで間もなく発売され、アメリカとカナダでは1月に発売になります。非常に思い入れのあるCDですので各地でどのように評価されるのか興味津々です。

録音について、ここで有名なチェリビダッケのビデオをご紹介します。このブログで既に取り上げたことがあるかもしれません。

音楽の現象学というタイトルのビデオですが、後半で録音について、彼がなぜ録音をしないか、説明しています。
その中で、音量について、小さい部屋で話すのと違い、大きい部屋で大勢の人を前に話す時には自然に声は大きくはっきり話さないと伝わらないという話があり、また、テンポについて、テンポは音響との関係で決まってくるという話があります。残響の多いところではテンポが速過ぎると音が重なるのでゆっくり演奏しないといけない、残響の少ないところではその反対に速めのテンポを取らないと音と音の間に隙間が空いてしまう。絶対的な正解のテンポというのはない、云々。まあ、特別斬新なことは言っていないわけですが、録音について考えると、「難しい」という結論になるのも分らなくはないわけです。

私は自分のレーベルを作っているくらいですからチェリビダッケと同じように考えているのではありません。彼の時代とは違い、私にとって、特に10代の頃は生演奏以上に録音を聴くのが音楽との大きな接点でしたので、いいアルバムを作りたい、という思いもあります。今の若い世代の方にはアルバムという感覚はもうないのかもしれませんが。

もともと音楽は何百人何千人というたくさんの人が並んで座ってじっと動かずみんなで耳を澄まして聴く、という鑑賞スタイルのために書かれたものでもないと思います。録音されて聴くものではない、というのも同じことだと思うのです。本来の聴き方聴かれ方ではなくとも、その媒体、コンサートホールやステレオ機器を通して音楽を楽しむことに特に問題は感じません。チェリビダッケが上のビデオの中で「ブリジット・バルドーが大好きだから彼女の写真を40枚持っているのと、レコードを買い集めるのはわけが違う」と言っているのはよく分りますが。

「いくつものマイクを置いて音に臨場感を持たせるのは馬が左から走って来て右に走っていったのを聴かせるようなもので意味がない」とも言っていますが、今はこういう取り方はあまりしないかもしれません。「音の高低により弦の位置が音像として動く」と録音評にもあるように、今風の録音をしていない僕のCDに馬が右から左に走ったような効果が聴かれます(笑)。

「演奏会場で聴く音のバランス」というのが、最近のCDの「いい録音」のキーワードなのでしょうか。であったとしたら、どの演奏会場がいいのか、という話になってしまわないですか。今時のちょっとしたミキサーには世界の有名なホールの音響を付けることが出来るソフトなんかも入っていて、これもどのようにしてサンプリングをしたのか、疑問です。どのホールでもお客さんの入り具合で残響の長さは変わりますし、一列ずれたり一席右左にずれるだけでぜんぜん音は違いますし、聴いている人の座高によっても変わってくるかもしれません。私には「演奏会場で聴く音」という言葉は一枚の木の葉のようなものに思えるのですが—。

「一枚の木の葉が他の一枚に全く等しいということが決してないのが確実であるように、木の葉という概念が、木の葉の個性的な差異性を任意に脱落させ、種々の相違点を忘却することによって形成されたものであることは、確実なのであって、このようにして今やその概念は、現実のさまざまな木の葉のほかに自然のうちには「木の葉」そのものとでも言い得るような何かが存在するかのような観念を呼びおこすのである。つまり、あらゆる現実の木の葉がそれによって織りなされ、描かれ、コンパスで測られ、彩られ、ちぢらされ、彩色されたでもあろうような、何か或る原形というものが存在するかのような観念を与えるのである。」(フリードリヒ・ニーチェ「哲学者に関する著作のための準備草案」1872∼1873)

レコ芸!

先月20日に発売されたレコード芸術2016年10月号にインタビュー(3ページ)が載っています。レコード芸術という雑誌は中学校高校生の頃に耽読(笑)していた雑誌ですので感無量です。

http://www.ongakunotomo.co.jp/magazine/recordgeijutsu/

2016/10/15(土)19:00 サントリーホール ブルーローズ
2016/10/25(火)19:00 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール
チケット発売中!

プログラム
モーツァルト ロンドイ短調 K.511
シューマン 幻想小曲集 Op.12、3つの幻想小曲集 Op. 111
ブラームス パガニーニの主題のよる変奏曲 Op.35

詳細はコンサートページをご覧下さい。