ドビュッシー「水の反映」自筆譜と初版と原典版と

ミラノはますます暑く、とても夏らしくなって来ました。

ドビュッシーの映像第1集の第1曲「水の反映」の、自筆譜と初版にあるちょっとしたリズムの違いをここで書いておこうかと思いました。
そもそもこの曲の、フランス語の原題は「Reflets dans l’eau」といって、dans l’eauは英語だとin the water、水の中の、ということで、水面の反射ではなく、水の中で光の反射する様子が描かれているのですね。

では、ここで注目するのは、第33小節。

1:45あたりからです。

水の反映 第33小節 Durand初版

水の反映 第33小節 自筆譜

この左手バスのリズムがなぜか自筆譜では付点と十六分音符の旗が消されて2つの八分音符になっています。要するに前の小節と同じリズムではなく、次の小節と同じリズムであるということです。これは、決定的な違いであって、なぜ初版に反映されなかったのかは分らないし、ドビュッシー自身によって訂正されたのがどうかは定かではありませんが、たとえ他人によって訂正されたのであったとしても、自筆譜の訂正後のもののほうがずっと説得力があると私は思います。

初版の版権が切れてから出た所謂「原典版」も見てみましょう。

水の反映 第33小節 ヘンレ版 1989年

水の反映 第33小節 ベーレンライター版 2012年

この曲に関してはどちらの原典版も自筆譜と初版を基にしていると書いてありますが、ヘンレ版にはこの自筆譜に見られるリズムの訂正は反映されておらず、巻末の注釈でも触れられていません。ベーレンライターは自筆譜の通りになっており、注釈にも訂正されており、この訂正はドビュッシーがしたに違いない、と書かれています。

で、何が言いたいのか、と言うとですね、こういうふうに楽譜をそれぞれ読み比べるのも演奏をするという行為への過程のひとつでして、このような小さな部分の自筆譜と初版と原典版のそれぞれの違いを見付け、正しいか間違っているかという結論はなくて、自分の考えでどのように弾くかを選択する、というのもまた楽しいことなのです。

- 自筆譜と初版はペトルッチ・ミュージック・ライブラリーでダウンロード出来ます。
https://imslp.org/wiki/Images%2C_1ere_s%C3%A9rie_(Debussy%2C_Claude)