なぜこの4曲なのか。

前回は単にベートーヴェンのCDを出しました。というご報告でしたが、このCDについて、なぜこの4曲ですか?と尋ねられることがありますのでお答え致します。
選曲をする時には、コンサートのプログラミングでも同じことですが、同じような曲が並んでいても退屈ですし、全く無関係な曲が並んでいるのも通して聴く意味がないので、各曲に関連があり、バラエティーもあるプログラムがいいのではないかと思っています。ゆっくりした曲だけのCDや激しい曲ばっかりのCDももちろんありえますが。
で、このCDでのバラエティーはといいますと、それぞれの曲の性格が違う、というだけでなく、ベートーヴェンの生涯の異なった時期に作られた作品であるということでしょうか。ベートーヴェンのソナタは32曲それぞれ全く違いますからどれを選んでもヴァラエティーは充分あります。

ピアノソナタ第13番Op.27-1の書かれた1800年頃のベートーヴェン

ではそれぞれの曲の関連ですが、これもコンサートのプログラミングと同じく、まずは調性です。複数の曲を続けて聴く時には、調性のある曲であれば、やはり調性に関連がある方がいいのではないでしょうか。例えばあまり音楽の知識のない人は調性などにはこだわらないし分らない、というのは大きな間違いだと思います。どんな音で終わってどんな音で始まるかは聴いていれば感じるますし、むしろ分らない人ほど敏感かもしれません。
それは近い調であればいいというだけではありません。あえて遠い調を持ってくるということももちろんありえます。。私の1枚目のショパンのCDはショパンのOp. 59の3つのマズルカから始まりますが、この3曲は続けて聴いても自然ですがそれぞれの曲の調性はとても遠いです。下にOp.59-1のマズルカのビデオを貼付けてみました。ひさしぶりに聴いてみると少し違和感もありますが、どういう曲かはとりあえずわかります。

ベートーヴェンのCDの4つのソナタはハ短調、変ホ長調2曲、変イ長調という順でこれは♭3つから4つのとても近い調ですね。それだけではなく、悲愴の第2楽章は変イ長調、Op.27-1の第2楽章はハ短調、第3楽章のアダージョはこれも変イ長調、告別の第2楽章はハ短調とそれぞれ関係しています。また、悲愴の第2楽章の中間部は変イ短調という♭が7つある珍しい調ですがこれはOp. 110の第3楽章の嘆きの歌の一回目の調でもあります。

ピアノソナタ第31番の書かれた1年後、1823年の肖像画

調性だけではなく、これらの曲には共通している動機というのか音形も見られます(聴かれます)。
一例を挙げると、悲愴第3楽章78小節目

Op. 27-1第3楽章アレグロヴィヴァーチェのコーダ冒頭265小節目

Op. 110第3楽章フーガ冒頭

以上3つの箇所で聴かれる上ったり下がったりする音形は似ていないでしょうか?異なる時期に書かれた3つの作品に似た音形が使われているのは興味深いと思いつつ、このように楽譜を貼付けて並べてみると、それで?という気もしなくもないですが、まあ、それぞれ関連がありますね、というだけのことです。他にもありますので、興味のある方は探してみてください。

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2016年5月6月の日本でのコンサートのお知らせ

吉川隆弘ピアノリサイタル
ピアノリサイタル
2016/5/25(水)19:00 西宮市プレラホール
2016/6/3(金)19:00 イタリア文化会館東京 アニェッリホール

プログラム
ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番 変ホ長調 Op.81a『告別』
リスト:
巡礼の年第2年『イタリア』より
婚礼、物思いに沈む人、ペトラルカのソネット第104番、ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲
巡礼の年第3年より
エステ荘の糸杉に I:哀歌、エステ荘の糸杉に II:哀歌、エステ荘の噴水

詳細はコンサートページをご覧下さい。

11/27大阪 12/5日東京 12/7大垣

もう半年以上前にほんとにくだらない文章をだらだら書いて以来ほったらかしにしてました。
11月12月の日本でのコンサートの告知を書き込みます。

2014/11/27(木)

大阪 ザ・フェニックスホール
リサイタル「悲壮美そして情熱の調べ」
18:30開場 19:00開演
全席自由 4,000円
主催:Ampio(吉川隆弘後援会)
後援:世界の子供服 マ・メール 

ご予約・お問い合わせ:
Ampio(吉川隆弘後援会) tel:0798-73-3295

e-mail:ampio@takahiroyoshikawa.com

チケットお取り扱い:
ザ・フェニックスホールチケットセンターtel:06-6363-7999
イープラス http://eplus.jp
吉川隆弘ピアノリサイタル

プログラム
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
・ピアノソナタ第8番 ハ短調 Op. 13「悲愴」
フランツ・リスト作曲
・超絶技巧練習曲第10番 ヘ短調
・超絶技巧練習曲第11番 変ニ長調「夕べの調べ」
・超絶技巧練習曲第12番 変ロ短調「雪あらし」
フレデリック・フランソワ・ショパン作曲
・マズルカ ホ短調 Op. 41-2
・マズルカ 嬰ハ短調 Op. 63-3
・舟歌 嬰ヘ長調 Op. 60
モーリス・ラヴェル作曲
・夜のガスパール( オンディーヌ – 絞首台 – スカルボ)

2014/12/5(金)

東京 サントリーホールブルーローズ(小ホール)
リサイタル「悲壮美そして情熱の調べ」
18:30開場 19:00開演
全席指定 S 5,000円 A 4,000円
主催 Ampio吉川隆弘音楽事務所
後援:世界の子供服 マ・メール 

ご予約・お問い合わせ:
Ampio吉川隆弘音楽事務所 tel:03-6421-8131

e-mail:ampio-tokyo@takahiroyoshikawa.com

チケットお取り扱い
サントリーホールチケットセンター tel:0570-55-0017
チケットぴあ  Pコード:238-334

プログラム
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
・ピアノソナタ第8番 ハ短調 Op. 13「悲愴」
フランツ・リスト作曲
・超絶技巧練習曲第10番 ヘ短調
・超絶技巧練習曲第11番 変ニ長調「夕べの調べ」
・超絶技巧練習曲第12番 変ロ短調「雪あらし」
フレデリック・フランソワ・ショパン作曲
・マズルカ ホ短調 Op. 41-2
・マズルカ 嬰ハ短調 Op. 63-3
・舟歌 嬰ヘ長調 Op. 60
モーリス・ラヴェル作曲
・夜のガスパール( オンディーヌ – 絞首台 – スカルボ)

2014/12/7(日)15:00
大垣市スイトピアセンター音楽堂で宮松重紀指揮大垣市室内管弦楽団とブラームスのビアノ協奏曲第2番を演奏します。

以上です。実はコンサートページからコピペしたので全く情報は同じです。これではブログの意味がありませんね。近々何か書きますね。

2つのノクターン

 そもそも演奏についての感想そのものにあまり興味がなく、さらに言えば、聴き比べる、というのは余りにも安易な行為であるようにも感じており、ではなぜここで同じ曲の2つの演奏を紹介するのかというのはまた一つの問いとしてありえるものだとしても、たくさんの演奏を聴き比べてこれが好きだとか、この演奏のここがいいとか、そういうのは演奏をする立場の人間の取る態度としては褒められたものではない、という思いもあり、というのも、聴き手の持っている、初めて聞くのであれば、持つ、ある曲についての考えとでもいったものをその演奏は満たしているかどうか、という聴き方には疑問があり、それは作曲家であればあり得る態度でもあるだろうが、聴き手においては、また、本来は作曲家においても、ある曲についての考えというのは、たとえ自分が作曲した曲であっても、その曲を聴くたびに新たにされる、或は新たにされるべきものであるだろうし、演奏家にとっても、演奏中にその演奏を聴いてもいるのだとしたら、演奏直後からは、過去の自分の演奏はまるで他人の演奏のように感じられ、もはやどうしてあの時あんな風に演奏したかも自明ではないだろう。この辺りについては、巧く説明出来ないし、説明出来ないのではなくてむしろしたくないという事情も働いているのかもしれず、ともかく、この2つの演奏についても、今後の自分の演奏についても、また当然他人の演奏についても、特に感想を述べるつもりはないと言っておきたい。
 ある人が美味しいと思うものを別の人も美味しいと思うとは限らないのと同じように、どんなに自分にとって「いい」演奏をする努力を重ねても、目指していた「いい」演奏そのものを他の人が「いい」と感じてくれるかはわからない、という種類の話とはまた別に、演奏について言えば、どのような演奏をするかについて演奏をする前に考えることと、実際に演奏をすることの間には大きな隔たりがあり、そしてその隔たりはあるべきものであるとも言えるだろう。というのは、こうしよう、と事前に思ったことをする、というのが演奏なのであれば、こうしよう、と思った時にある曲の全体についての完全なヴィジョンを持ち得るか、という疑問があり、この点については以前モーツァルトの手紙を基に書き始めたがいつものように勿論途中で挫折した(「ちょうど美しい一幅の絵或は麗しい人でも見る様に心のうちで一目でそれを見渡します。後になれば、むろん次々に順を追って現れるものですが、想像の中ではそういう具合には現れず、まるですべてのものが皆一緒になって聞こえるのです。」曲全体をまるで一目で見渡すかように聴くこと、または音楽と絵)。同時に、こうしよう、といった風に音楽を、音楽だけではなく恐らく全ての芸術を、何らかの確固とした意図として捉えるのは、ほとんど不可能なように思われる。それは、「捉える」ことが出来たと思った瞬間に人は言葉で説明をしてしまう、しかしある芸術を言葉に置き換えること、言葉で作られた芸術であっても他の言葉に置き換えることは不可能でしかないということでもあるし、また、ある印象を捉えたのであればその捉えたものをその捉え方において表現する(というのが何を意味しているかは自分でも分らなくなって来たが)のが自然であるとすれば、音楽について捉えたことを表現する方法により適しているのはむしろ音楽ではないだろうと端的に言い切ることは出来ないとしても、また、演奏するにあたってはある印象を掘り下げる作業をせざるを得ず、そしてその作業そのものが創造への道でもあるとしても、聴き手として演奏についての感想を持つということについて言えば、紆余曲折を経たものの結論が余りに意外にシンプルで少し申し訳ないが、曖昧なままの形であまり説明しようとせずに自分の中にとどめておくのが誠実である。それはコンクールの審査員のようなお話しはお断りする理由でもあるし、そもそも競技ではないのだからコンクールのようなものはすこし可笑しいと言っていいだろうか。可笑しいという表現もまた可笑しいが、ではなぜ私自身がコンクール受賞歴のようなものもプロフィールに載せているか、というのもまたありえる問いであるとして、吉川隆弘が演奏をする、歴史的な大ピアニストが演奏をする、ピアノを勉強して間もない子供が演奏をする、それぞれの間にあるある種の高さ/低さ、或は、浅さ/深さ、の差異と関係なく、全ての演奏は、ある曲の再現であると同時に創造である。その時にそこで演奏されることでその曲が存在しうるというだけではなく、演奏そのものもまた、表現ではなくて創造としての価値を持っている。この辺りまで多大な労力を払って読み進めた時にむしろ自然に湧き出てくるであろう、なぜこのようなほぼ無意味に近い内容を余りにも仰々しい調子で書いているのか、という疑問については、それが自らの演奏を自分のブログで紹介するという行為そのものをすこし恥じており、茶化したい、或は照れ隠し、ということであるように察していただけるかどうか、ただ、そう察してもらうには余りにも偉そうな口調ではあるかもしれない。
 音楽を聴く、というのはもちろん大変な集中力を必要とする行為で、お腹が一杯だと美味しいものも美味しく感じられないように、余り聴きすぎてもいけないし、また、ちょこちょこつまみ食いをするように、断片をかじり聞きしてばかりいても良い影響はないと思われ、いろいろ考えると、Youtubeというものにはネガティブな面が多すぎて、付き合いすぎるのはお勧め出来ません。回数はほどほどに、少なくともある種の覚悟を持って「聴く」、見るばっかりでなく、よーく聴かないとどんな演奏かはわからないと思います。

 どうも最近はこのブログでは告知ばかりで、下心があり読んでくれる方に媚びているためか「です/ます」と丁寧な口調で書くことが多く、今日は「である」で書こうと思ったのだが、最後には「です/ます」になってしまいました。では以下告知です(笑)。対談でもないのに一人で(笑)と書くのは最後にしたいです(笑)。

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5月30日目黒パーシモンホール小ホールでリサイタルをします。

日時:2014年5月30日(金)18:30開場 19:00開演
全指定席 S席4,000円 A席3,000円

—チケット取扱い—
チケットぴあ Pコード 221-661
Ampio東京支部(吉川隆弘後援会)
TEL. 03-6421-8131
E-mail. ampio-tokyo@takahiroyoshikawa.com
めぐろパーシモンホールチケットセンター窓口
(販売時間 10:00~19:00)TEL. 03-5701-2904

—プログラム—
ベートーヴェン
 ピアノソナタ 第26番 変ホ長調 Op.81a『告別』
 ピアノソナタ 第31番 変イ長調 Op.110
ラヴェル
 『鏡』蛾 – 悲しき鳥たち – 大海の小舟 – 道化師の朝の歌 – 鐘の谷
ショパン
 ノクターン第14番 嬰ヘ短調 Op.48-2
 スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39

★関西では6月4日に西宮市プレラホールで同じプログラムのリサイタルをします。近日発売開始予定です。

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ショパンの楽譜について

楽譜の問題は、実は作曲家が生きている現代音楽を弾く時にもありえることです。
去年『Across Virtuosity II』というCD(DVD付き)を収録した時にも、今生きているイタリア人の作曲家の作品では作曲家が収録に立ち会ってくれましたが、楽譜の間違いの指摘がその場であり、楽譜とは違った風に弾くことも出来るという提案もあり、逆に演奏家からの提案もすんなり受け入れられたり、それはイタリア人気質であるだけかもしれませんが、原典版、などという発想とはほど遠いものでした。『Across Virtuosity II』はIIというからにはIもあるのかというと、Iを作った時はIIを作る予定はなかったのでただの『Across Virtuosity』です。スカラ座首席クラリネットのファブリツィオ・メローニとのデュオのCD、『Across Virtuosity』はイタリアオペラの編曲ものを集めたプログラムで、アマゾンHMVなどから買えます。同じくメローニとの第2弾『Across Virtuosity II』はウェーバーの大二重奏曲の他はイタリアの現代の作曲家の作品集です。まだ発売されていませんが、iTunesから音だけダウンロード出来ます。

いきなり冒頭で脱線しました。

ショパンの楽譜について考えることを少し書いてみます。

例えば日本語のwikipediaの原典版を見てみると、『原典版は、19世紀的な合理主義、その当時の演奏家中心の解釈を盛り込んで作られた楽譜を、作曲家の本来の意図に戻すことを目的に作られた。』という文章があります。例えば、19世紀に出版されたバッハの楽譜は自由にテンポや強弱が書き込みまれたのでもう一度作曲家の書いたままのものを、といったケースについて書かれているなら分らなくもないのですが、19世紀を否定して遡ったところで18世紀にも『原典版』という発想はもちろんなかったので、実は『作曲家の本来の意図に戻す』という発想そのものがむしろ20世紀のものだとも言えると思います。
19世紀の作曲家でまた演奏家でもあったショパンを弾く上では『19世紀的な合理主義、その当時の演奏家中心の解釈』というのは、理解を深めないといけない点であって否定することではないように思います。『19世紀的な合理主義』という言葉がそもそも意味不明ですが。wikipediaに突っ込みを入れてもあまり意味はないですね(独苦笑)。
原典版、Urtextという発想は、そもそも後の時代のもので、ショパンがバッハを弾く時に、自筆譜や初版に興味を示さなかったのではないか、とも思います。

ノイハウス(リヒテル、ギレリスの先生でブーニンのお祖父さん)が書いたピアノ奏法の本に、師レオポルド・ゴドフスキーがある曲を弾くのに10冊以上の楽譜を参照していたという話があった筈で、そのある曲というのはショパンの曲だったように思います。ところが、ゴドフスキーの演奏はと言うと、残されている数少ない録音から察するに、音の扱いはとても自由で、音が加えられていたり変えられていたりもします。多くの楽譜は解釈の参考にしていたということなのかもしれません。

例えば、コルトーは有名な練習版(コルトー版)で、2番のバラードの101小節とその類似箇所について注釈で『自筆譜ではこう書かれている』として譜例を上げています。またしばしばコルトー版の注釈には『パリの(或はイギリスの)原典版では』という言葉も出て来ます(彼の言う原典版は初版のことだと思います)。コルトー版は、文章から解釈が垣間見れ、そして豊富な練習例などから今でも価値はありますが、原典版ではないし、印刷されている音は信用出来ない、という風潮があるかもしれませんが、実は彼は自筆譜と各初版(フランス、ドイツ、イギリスなど)は参考にしているし、時には弟子の楽譜にはこういう書き込みがある、という文章もあるところから、かなり原典版に近い資料に目を通していたことになります。では、なぜ原典版と違ってくるか、と言うと、それはやはり解釈をしているから、ということになりますか。そして作曲家でもないのに『解釈をする』というのが、19世紀的であったとしたら、それはショパン自身も解釈されるものだと知っていたということになるのではないでしょうか。もちろん、所謂原典版も、多くの異稿から取捨選択しているということは解釈していることに違いはなく、むしろ、堂々と『私の考えでは』と言ってしまうのが19世紀的態度で、原典であって正しいのだという立場を取るのが20世紀的である、と言えるのかもしれません。

原典版というと、その発想が、20世紀的であると同時に英語でもUrtextとドイツ語が使われるようにドイツ的なものでもあり、ドイツ語圏から権威のある原典版が出ています。ウィーン原典版やヘンレ版などです。『24の前奏曲』を例にとると、自筆譜とフォンターナによる筆写譜、フランス初版(と訂正が加えられた第2版)、ドイツ初版、それにショパンの生徒の楽譜にショパンが書き込んだ指示、などが原典版などが作られる際に主な資料として用いられます。

ショパンはポーランド人だったから、ということなのか、ポーランドから出版されている有名な楽譜もよく使われます。一つは原典版で、ナショナルエディションという名前ですが校訂をしたとされるヤン・エキエルに因んで一般的にエキエル版と呼ばれています。エキエル氏が2010年のショパンコンクールで審査委員長だったのでコンクールで広く使われました。彼は今年100歳です。おめでとうございます。100歳だからということではないのでしょうが、21世紀に入ってから出版され始めた最新の原典版なのに個人の名前が大きく前に出ていて、19世紀の香りを感じます。
同じくポーランドの『パデレフスキ版』と呼ばれる解釈版も広く使われていると思います。大ピアニストでポーランド首相にもなったパデレフスキの名前がついていますがどれだけパデレフスキ自身が関わったかよく分りません。この版は原典版ではなく、非常に大胆に解釈を押し進めていることが多く、ただ解釈しているブロナルスキ博士やトゥルチヌスキ教授が演奏家としては知られていない(不勉強で僕が知らないだけかもしれませんが)のですこし解釈者の名前としての説得力が弱いでしょうか。スラーなどについてはあまりに自由で、たとえ巻末の注釈に断りがあっても、やはり印象として頭に残ってしまう恐れがあるので楽譜自体は見すぎないようにしていますが、注釈には、調号などについての和声的な説明まで譜例付きで詳しく記されていて、解釈の根拠が明確な点が、20世紀の解釈版の面目躍如であると思います。

では、21世紀の楽譜の在り方というのはではどうかというと、Petrucci Music Libraryに代表されるウェブからのダウンロードになるでしょうか。これは便利ですが、著作権の問題を抱えています。上に挙げたような楽譜は版権があるのでフリーダウンロードのサイトでは見られないと思います。誰にでもその場で無料で手に入る代わりに版権の切れた解釈版以前のものが主流になるとしたら、それは後退でしかないですね。

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コンサートのご案内です。

5月17日(金) 西宮市プレラホール
18:30 開場 19:00 開演 全席自由 3,000円
主催、ご予約、お問い合わせ:Ampio(吉川隆弘後援会)
tel: 0798-73-3295 / e-mail: ampio@takahiroyoshikawa.com
吉川隆弘オールショパンリサイタル

5月24日(金) HAKUJU HALL
18:30開場 19:00開演 全席指定 4,000円
主催、ご予約、お問い合わせ:Ampio東京支部(吉川隆弘後援会)
tel: 03-6421-8131 / e-mail: ampio-tokyo@takahiroyoshikawa.com
Takahiro Yoshikawa All Chopin R

プログラム
ショパン:
24の前奏曲 Op.28
ピアノソナタ第2番 変ロ短調『葬送』
バラード第2番 ヘ長調 Op.38
バラード第4番 へ短調 Op.53