ハイドン ソナタ へ長調 Hob. XVI: 23 (3)

第2楽章はAdagio。8分の6拍子、へ短調。

この楽章は「シチリアーナ(またはシチリアーノ)」といわれることがあります。
シチリアーナというのは「シチリアの」という単なる形容詞で、そもそもシチリア島と関連があるのか、よく分かりません。
一般に下のようなリズムがシチリアーノの典型と言われます。

この中の下のリズムが特徴的で、の16分音符が少し後に短くなって揺れる感じが出されたりします。

速すぎないテンポで、メランコリックでノスタルジックな感じが醸し出されます。
典型的なものを以下に。
バッハのフルートソナタより(偽作)

フォレのペレアスとメリザンドより(フランス語だとシシリエンヌとちょっと小洒落た感じになります)

レスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲第3曲

まさにこのリズムを使って、ハイドンも書いています。
オラトリア「天地創造」第8曲 アリア「いまや野は爽やかな緑をさしいだして」
メランコリックというよりはパストラーレ=牧歌的な音楽になっています。

どうも書き始めると長くなってしまって煩雑になり、何が言いたかったのかが分かりにくくなってしまう傾向があります。
ここで私の言いたいのは、このへ長調ソナタの第2楽章は、シチリアーナであってもなくてもどうでもいい、ということです。
関係が無いということを書くために、先にシチリアーナとは何かを長々と書いてしまったせいで、ここまで読んでいただかないとまるでシチリアーナだということを書いているかのように誤解される恐れが大いにあるのが痛いですね。
思うに、何事においても名前を付けて分類をするのが好きな人が多く、一般化することで関連や差異を見出し理解をするのに役に立ちますが、こと音楽に関しては、分かったつもりになってしまう悪習でもあると思います。
私の感覚では、シチリアーナというのはアンダンテ程度のテンポの曲で、そのリズムが使われていてもアダージョだとシチリアーナとは言えないのではないのではないかと思います。テンポが違っても典型的なリズムが使われているというのであれば、ベートーヴェンの7番のシンフォニーの第1楽章や9番のシンフォニーの第2楽章でも大いに使われていますがシチリアーナという人は誰もいませんね。
この楽章は、ほとんど同じ時期に同じ調性で書かれたモーツァルトの2番のソナタの第2楽章や、23番のコンチェルトの第2楽章(嬰へ短調)などと通じる音楽で、これらの音楽についてもシチリアーナであると言われることがあるのは承知していますが、シチリアーナのリズムが使われているのは事実だとしても、それを曲目解説などに書くことによってまるでこれら曲はワルツであるとかマズルカであるというように曲の性格そのものを表すことにはなりません。ハイドンやモーツァルトがそう言ったとしても、レスピーギやフォレのシチリアーナを知ってしまっている私達にとっては全くの別物であると彼らに説明しましょう。

第3楽章は4分の2拍子へ長調。ソナタ形式ですが、第2主題は第1主題とほとんど同じですので、形としてはソナタ形式ですが主題間のコントラストはなく、むしろ16分音符の下のようなフレーズが舞台転換のように挟まれるのが印象的です。

この曲に関して書きたいことはまだまだあり、特に書くべきことを書き逃しているという気も大いにしますが、あまりにも長くなりましたので、もう、これで終わりにします。

以下の公演でこのソナタを演奏します。

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

詳細はCONCERTページをご覧ください。

ハイドン ソナタ へ長調 Hob. XVI: 23 (2)

前回の第1楽章の続きです。

第1楽章について初めの数小節を見ただけで細々(コマゴマ)と書き始めてしまい、曲頭の4小節までで前回は終わりましたが、顕微鏡のように細部を拡大して見るのは先に全体を大きく捉えてからにしないといけません。間違えました。
では、第1楽章全体を大きく捉えるには、どうすればいいでしょうか。とりあえず、この曲は「ソナタ」というタイトルですので、第1楽章ではソナタ形式が使われているのではないかと、疑ってみるとどうでしょうか。はい、ソナタ形式ですね。第一主題は曲の冒頭のもの、第二主題は21小節、そのアウフタクトからでいいのかもしれません。

展開部では、第1主題と第2主題の間の所謂推移部のフレーズが扱われ、第2主題は出てきません。
(自筆譜は見にくいので初版を切り取って見ましたが、アウフタクトで段が変わっているのでこれも見やすくはないですね。しかも、上の譜例もですが、大きさの調整がうまくいかず、2つの繋がっているもののサイズが違うのでとても無様です。申し訳ありません。)

29小節で直前のハ長調のV7からハ短調のVI=変イ長調の主和音になるのが印象的です。

(つづく)

以下の公演でこのソナタを演奏します。

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

詳細はCONCERTページをご覧ください。

ハイドン ソナタ へ長調 Hob. XVI: 23 (1)

11月から12月にかけて日本で弾く予定の曲について、知っていることや思うことをつらつらと書いてみます。

まずはハイドンのソナタ。

曲の成立した事情などになると伝記的な史実や時代背景などにも触れざるを得なくなりますが、煩雑になるので、Wikipediaのリンクを貼っておきますね ハイドンについて。また興味のある方はハイドンとゆかりの深いエステルハージ家についてもご覧ください。Wikipediaはじめネットに転がっている情報は、知っていることについて書いてあるのをみるとなんだか怪しいことも多く、でも、知らないことについてはうっかり見てしまうので、注意が必要です。興味のある方は、書籍などで詳しく調べましょう。

このソナタは1773年(少なくとも74年まで)に書かれました。すでにヨーロッパ中に名を知られていたハイドンの作品はしばしば作曲者の知らないところで勝手に出版されていたそうで、このソナタを含む「チェンバロのための6つのソナタ集」は、ハイドン自身によって出版社とやり取りを交わして出版されたということです。やり取りというのが、契約なのか、または校正なのか、はっきりしません。自筆譜にあるスタッカートの記号などが初版には欠けているのを見ると、ゲラの校正をしたのではないと思います。これら6つのソナタはニコラウス・エステルハージに捧げられました。このニコラウスさんはハプスブルク家からエステルハージ家に伯爵号を与えられた時の人で、1645年に亡くなっていますので、そのニコラウスさんに捧げてエステルハージ家への感謝を表したということなのでしょうか。あるいは違うニコラウスさんがいたのでしょうか。よく分かりません。「知っていることや思うことをつらつらと」と冒頭で書きましたが、いきなり知らないことをたどたどしく書き始めました(苦笑)。そしてこのニコラウスさんに関することなど、どうでもいいことかもしれません。ただ、書くということは知らないことをこそ書くのだ、知っていることを書いても意味がない、というような文章を見たこともあり、それはもっと内容のある文章に関する言葉ではあったにしても、気にせずこのままのスタンスで続けます。

では曲を見ていきましょう。
第1楽章、自筆譜にはテンポの指示がありません。特別なテンポで弾かれるべきだと考えていたとしたら何か書いたと思うので、この楽章はいつも通りのハイドンのソナタの第1楽章のAllegro(初版)でいいと思いますが、32分音符がたくさん出てくるので速過ぎてもいけないと思ったか、ランドン校訂のウィーン原典版はModeratoです。
自筆譜を見てみると、右手はハ音記号ですね。へ長調、4分の2拍子です。
(自筆譜はImslpにあります。初版その他いろいろあります。)

スタッカートについて
弱起の後の第1小節の1拍目の右手のファの音にスタッカートの記号が付いています。縦長でとんがっている記号、人参のような、これはスタッカティッシモと言うのでしょうか?ここで書かれているこの記号に、単なるスタッカートではなくスタッカティッシモという意味があるのかは定かではありません。ともかく、スタッカートとは、切れていることで、アーティキュレイションの記号の一つです。前後の音と分離されていると言えばいいのでしょうか。辞書などにも誤解があるようですが、音の長さが短くなるのではありません。短く聞こえるかもしれませんが、少なくとも、短く演奏するのではないのです。例えば、「おっと」と言った時、「お」と「と」の切れ具合によっていろんなニュアンスが出せると、これはあまり的確な例ではないですが、そのような重なった子音の感じであったり、そういった表現を付けましょうという記号です。「ファー」と伸びるのではなく、「ファッ」と小さな「ッ」の入るイメージで、その小さな「ッ」も含めて8部音符というのが正解だと思います。あるいは「ポン」と音がする「ン」など。そして、管楽器のタンニングや弦楽器の弓のアタックのように、音の始まり方も、当然アーティキュレイトされないといけません。始まりは前の音と繋がっていてただその音の終わり方だけにスタッカートのニュアンスを付けるのは、上の譜例の2小節目の1拍目裏拍から2拍目頭にかけてのように、前の音とスラーの掛かっている場合のみです。
8分音符にスタッカートが付いているから16分音符で弾く、というのは単純な間違いです。そのような発想自体が根本的に間違っているので、例えばWikipediaにある「一般に音価の半分の長さ鳴らすと説明されるが、実際には場合によってこれより長くなることも、短くなることもありうる。」という文章は、日本語として間違えているだけでなく、意味がありません。他のサイトなどで、4分音符にスタッカートがあるものを「記法」の譜例に、そして8分音符と8分休符を「奏法」として載せているのを目にしましたが、そうだとしたら、なぜ作曲家がその奏法の方を書かなかったのか。もう少しよく考えましょう。ただ、特に小さいお子さんに説明するのに「考えましょう」というのも難しいのかもしれませんが。
音の長さというのはとっても難しい問題です。拍を数えるとき、1-2-3-4と言ってみると、この数字は拍の頭を数えているので、次の数字を言い始める直前までがその拍の長さになります。その長さ一杯一杯に伸びているというのはレガートの時です。例えば、テヌートという記号、ある音の長さを充分に保って演奏する、という意味になりますが、この記号のある音は、レガートでなければ、むしろ次の音とは切りますね。充分に保つ、でも切れるということは、短くなります。そもそも全ての音は切れているものなのかもしれません。人の声も、子音は母音の流れを分断しますから繋がっているとは言えないわけです。音の長さについても常に解釈しないといけないのですね。

アッポッジャトゥーラについて
上の譜例の2小節目の2拍目裏拍にアッポッジャトゥーラ=倚音(長前打音)が出てきます。これは当然拍の頭で弾くのですが、なぜ普通の音符で書かれていないかというと拍頭にある非和声音だからで、アッポッジャトゥーラらしいニュアンスを付ける必要があります。アッポッジャトゥーラというのは、もたせかける、支える、などと辞書にありますが、イタリア語のニュアンスとしては(楽語がイタリア語で良かった〜)重みをかけるというのか、まあ、まさに、もたせかけるという事になります。ズバリの日本語がなく、やはり辞書はきちんと言葉を選んであるなあとも思います。この小さい音符で書いてある音に軽く重みをかける感じですね。そうすると他の音よりも少し強調されるわけです。ちょっとしたニュアンスなのですが、大切ですね。

(続く)

以下の公演でこのソナタを演奏します。

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

詳細はCONCERTページをご覧ください。

リーメンミュージックのWEBTV(ウェブティービー:インターネットテレビ)

このホームページのトップページに「リーメンミュージックのWEB TVで吉川隆弘のリサイタルが公開されています!」という文章があり、WEBTVという言葉が日本でどのように認識されているかよく分らなかったのでwikipediaで見てみると、「WebTV(ウェブティービー)はマイクロソフトとウェブティービーネットワークス社によって開発された家庭用テレビ受像機に接続して使用するインターネット専用端末である。」とあります(WebTv)。これは「リーメンミュージックのWEB TV」とは関係ありません。インターネットテレビという項目に「インターネットを通じて、主として映像で番組を配信する、インターネットのコンテンツの一形態。」というのがあり、「リーメンミュージックのWEB TV」はこれに該当します。

トップページの各プログラムの題名にリンク(黄色い字)がありますが、ここをクリックしただけでは1曲目しか見られません。その他の曲も見ようと思ったらwww.limenmusic.comに行って、赤字のSKIP INTROをクリックして、「subscribe now for free! SIGN IN」と書いてある枠内をクリックし、「SUBSCRIBE NOW FOR FREE」をクリック、NICK NAME(ニックネーム)とPASSWORD(パスワード)をローマ字で記入してEMAILを記入、TERMS OF USEをクリックして規約を読んだら(読みましたということにして)I HAVE READ AND AGREE TO THE TERMS OF USEの左横の四角をクリックし、ENTERをクリック、次のページで入力したことを確認したらCONFIRMをクリックしてください。すると入力したメールアドレス宛にaccount@limenmusic.comからメールが届きます。メールにあるリンクをクリックするとニックネームとパスワードが有効になるので、ENTERをクリックしてwww.limenmusic.comに戻り、もう一度「subscribe now for free! SIGN IN」と書いてある枠内をクリックして有効になったニックネームとパスワードを入力したら全部見られます。見る前に毎回一つ誰かのアカウントを選び、自分が接続している間選んだ相手にポイントがたまり、そのポイントで将来なにか特典があるということですが、そのあたりはあまりに複雑なので誰か知り合いのアカウントがあるならそれを選んでも良いし、テキトーに選んでもいいと思います。

そんなに複雑な作業ではない筈ですがいちいち書くのは非常に手間でした。このホームページを見て下さる方全員がトップページにある演奏を見るために忙しい中この作業をしてくださるとも思えないので、ここで、内緒ですが、いちいちサインインしなくても全曲が見られるダイレクトリンクを大発表します!(内緒でもなんでもなく、一度ニックネームが有効になってサイトに入ると自分でプレイリストを作ることが出来、プレイリストはサインインしなくても誰でも見られるのです。)

ハイドン
ソナタ ヘ長調 Hob.XVI:23、ソナタ ト短調 Hob.XVI:44

ショパン
英雄ポロネーズ、ワルツ第3番イ短調、ワルツ第6番「子犬のワルツ」、ワルツ第7番、ワルツ第8番、幻想ポロネーズ(トレイラー

リスト
泉のほとりで、超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」、愛の夢第3番、婚礼、物思いに沈む人、ペトラルカのソネット第104番

リストとワーグナー
リスト:ダンテを読んでーソナタ風幻想曲(トレイラー)、エステ荘の糸杉にI:哀歌、エステ荘の糸杉にII:哀歌、エステ荘の噴水、ワーグナー:エレジー変イ長調

ストラヴィンスキー、ラヴェル、ドビュッシー
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカから3つの断章(トレイラー
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、水の戯れ
ドビュッシー:水の反映

恒例のコンサートのお知らせです。
11月10日に兵庫県西宮芸術文化センター神戸女学院小ホールにてリサイタルをします。
日 時 2011年11月10日(木)
開 演 19:00  (開 場 18:30)
会 場 芸術文化センター 神戸女学院小ホール
料 金 自由席(一般)3,500円/(吉川隆弘後援会会員)3,000円
お問い合わせ:Ampio(吉川隆弘後援会)TEL 0798-73-3295
program:
ベートーヴェン:ピアノソナタ第7番ニ長調 Op.10-3
プロコフィエフ:ピアノソナタ第6番イ長調 Op.82
ドビュッシー:映像第2集
ショパン:ノクターン第1番、マズルカ第41番、スケルツォ第2番