11月、ミラノ・スカラ座に出演します。

今月16日に発売になりました。日本からお越しの方、お早めにお買い求めください。
2019年11月16日、19日、21日、22日、27日、30日(2公演)ミラノ・スカラ座
バレエ公演「Georges Bizet / Wolfgang Amadeus Mozart / Maurice Ravel」
フェリックス・コロボフ指揮 ミラノスカラ座管弦楽団
”Petite mort”(振付け:Jiří Kylián イリ・キリアン)の音楽、モーツアルト作曲ピアノ協奏曲第21番及び第23番の緩徐楽章を演奏します。
Ph: Marco Brescia©Teatro alla Scala

スカラ座ホームページ:
英語 http://www.teatroallascala.org/en/season/2018-2019/ballet/balanchine-kylian-bejart.html
イタリア語 http://www.teatroallascala.org/it/stagione/2018-2019/balletto/balanchine-kylian-bejart.html

ベートーヴェンとナポリ (1) 月光

ナポリと言えばピザですね。トマトソースとモッツァレッラチーズとバジリコの乗っているマルゲリータというピザはとても有名です。
でも今日はピザの話をするのでも、ナポリの街の話をするのでもありません。
ベートーヴェンとナポリ、という題ですが、ベートーヴェンがナポリに行ったという話をするのでもありません。
ナポリの6度のお話です。
ナポリの6度とは「下属音上の短6度」です。ハ長調ですと、下属音はファ、その短6度はレ♭です。この音を持つ六の長三和音(長三和音の第1転回)は、ハ長調(短調も同じ)ですと、ファ−ラ♭–レ♭です。この和音はちょうど主音の半音上の音を根音とした長三和音の第1転回になります。詳しくはWikipediaをどうぞ。(ただ、Wikipediaには「例として、ハ短調であればⅡの和音Dm(♭5)の根音(D)を半音下げたもの」とありますが、機能としては、IVの和音FmのCを半音上げたもので、このCの半音上がったD♭には下降導音性があってCに行こうとします。)
と説明されてもよく分かりませんね。

月光のソナタを見てみましょう。
第1楽章冒頭です。

第3小節目の後半の和音に、レ♮があります。ファには♯が付いていますので、レ-ファ♯-ラの和音の転回になりますね。嬰ハ短調の中にニ長調の主和音が挟まっています。これが典型的なナポリの和音です。
第1楽章には他に2回出てきます。
21小節目の一つ目の和音(嬰へ短調の中にト長調の主和音)。

50小節目の1つ目の和音(嬰ハ短調の中にニ長調の主和音)。

これらの和音は、少し安定した感じから外れる感じと言いますか、ずれる感じ、どこか別の方向へ行きそうな感じ、意外な印象を与えるのではないでしょうか。あまりにも有名で聞きなれた音楽なので特別な和音には聞こえないかも知れませんね。。

違う曲ですが、ナポリの6度のとてもよく分かる演奏がありますのでご紹介します。
ただ、モーツァルトなんです。
ピアノ協奏曲第23番の第2楽章、エッシェンバッハの演奏です。
下のビデオは49秒目から始まりますが、59秒のあたりで、エッシェンバッハがハッとした表情を見せるところ、ここがナポリなんですね。


9小節目、嬰へ短調のVIの和音レ-ファ♯-ラの後、突然ト長調になりますね。エッシェンバッハ、流石です。
正に「あ、こんなところでピザの匂いがする!」とでもいった驚きの表情を見せますね。

月光に戻ります。第3楽章にも出てきます。



イ長調の主和音の第1転回形ド♯-ミ-ラが沢山ありますね。嬰ト短調のナポリの和音です。第1楽章とは違って劇的な効果を引き出しています。
再現部も同様です(嬰ハ短調の中にニ長調が)。




コーダにも。

沢山ありましたね。

展開部の中にも、ナポリの匂いのする怪しい箇所があります。


76小節は嬰へ短調のV7、78小節前半は嬰へ短調のVIの和音=ニ長調の主和音、後半でド♮が加わってト長調の属七から79小節でト長調になります。モーツァルトで見た進行とよく似ていますね。81小節の最後の16分音符でバスのソが半音下に引っ張られてファ♯になって、嬰へ短調になって行きます。79小節から81小節のト長調の部分で使われているソ-シ-レの和音は転回形ではないですが、前後の嬰へ短調に対して、ナポリの関係にあります。このような状況を、「ナポリの調」(主音の半音上の音を主音とする調)と呼んでみましょう。
(続く)

2018年11月12月の日本での公演のおしらせ

詳細はCONCERTページをご覧ください。

11月28日(水) 19:00開演
ピアノリサイタル 東京 銀座王子ホール

12月02日(日) 14:00開演
ピアノリサイタル 大阪 梅田 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

11月17日(土) 15:00開演
ピアノリサイタル 稲城市立 i プラザ ホール

11月23日(金) 17:00開演
赤坂区民センター区民ホール
「ピアノとバレエの華麗なる饗演」
吉川隆弘 X 西島数博 X 梶谷拓郎 スペシャルゲスト井脇幸江
ヴェニスに死す / イタリアン・カラーズ

スカラ座で弾いて来ました。

ご報告が遅れましたが、3月10日から4月7日の間12公演、スカラ座のバレエ公演でキリアンの振付けの”Petite mort”の音楽、モーツァルトのピアノ協奏曲の21番と23番のゆっくりの楽章を弾きました。

初日のカーテンコール Photo: Marco Brescia Teatro alla Scala

モーツァルトの、というよりもクラシック音楽の中でも最も有名な曲ですが、バレエの音楽ですので、テンポは自由に決められるわけではなく、また、たとえばちょっとした装飾を付けたりするにしても、かなりきっちりとストイックにまとまったシャープな振付けで、むしろ音の少ない感じが踊りにはあっているようでもあり、いろいろと自分がソロで弾くのとは違った演奏をすることになり、様々な制約の中で納得のいく演奏のできるように努力しました。制約、と書きましたが、音楽からキリアンが感じ取って作り上げた振付けなわけで、僕はその振付けからインスピレーションを得て演奏に活かすことが出来れば素晴らしいなあ、とも考えて弾いていました。
ゆっくりの楽章だけの演奏ということで、特に楽器の調整には気を使いました。ファブリーニのスタインウェイのD588395で、同じ時期にスカラ座でアレクセイ・ボトヴィノフ(ゴールドベルク変奏曲)やチョ・ソンジン(ラフマニノフ3番)なども使ったので、日によって調整が変わり、スカラ座の調律師のサンドロと毎公演前に調整をするのが始まりでした。

開場前、舞台上で照明のチェックをしている下で調律しているサンドロさん

僕の細かい要求に根気よく対応してくれ、本当にピアノが好きなのだなあと、感謝するとともに感心しました。ミラノに来るたくさんの有名なピアニストたちの調律をしている人で(ポリーニの家のピアノの調律を常にしている人でもあります)、こぼれ話とともに、誰がどのような特殊な調整を要求するかなど、興味深い話もたくさん聞かせてもらいました。同じピアノで同じ会場でほぼ同じ調律師(2公演は僕の家の調律をしているガルディーノさんでした)で12回公演というのは滅多に出来ない貴重な経験で、非常にいい勉強になりました。
僕はたまにスカラ座のオーケストラのエキストラとしてオケの中でも弾きますし、特にそれぞれの楽器の首席奏者とは室内楽をしますので、このオーケストラはみんな知り合いといった感じで、楽しくもあるけれども、むしろそこでソロで弾くのは大きプレッシャーでもあるわけです。もちろん音色であったりフレージングやアーティキュレーションを聴いてくれて認めてくれる人もいるはずですが、これだけ少ない音の曲を弾くということは、一つでも音を間違えたらそれこそ誰にでも分るわけで、倒してはいけないと思っていると倒してしまうワイングラス、のような変な緊張感もあり、なかなかスリリングな時間を楽しみました。

GPはタキシードにネクタイで Photo: Marco Brescia Teatro alla Scala

オーケストラピットで演奏し終わったらすぐに舞台に上がって挨拶をしました。ダンサーたちはもともと礼をするのもとっても様になっている上に、舞台稽古から礼のチェックにも舞台監督から細かく指示があり仕上げられている中に、GPから突然舞台に放り出されたピアニストの図です(笑)。

初日のカーテンコール Photo: Marco Brescia Teatro alla Scala

初日のカーテンコール Photo: Marco Brescia Teatro alla Scala

日本での6月のコンサートのご案内

2018年06月16日(土) 西宮市プレラホール 13:30開場 14:00開演
2018年06月23日(土) 赤坂区民センター 区民ホール  15:30開場 16:00開演

【演奏曲目】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2 『月光』
フランツ・リスト作曲
巡礼の年第2年「イタリア」より 第7曲 ダンテを読んで : ソナタ風幻想曲
巡礼の年第3年より 第4曲 エステ荘の噴水
モーリス・ラヴェル作曲
夜のガスパール

詳細はホームページのコンサートページをご覧下さい。

スカラ座出演!

ミラノ・スカラ座出演決定!

2018年3月10日〜4月7日(12公演) ミラノ、イタリア
バレエ公演「Mahler 10 / Petite Mort / Boléro」の “Petite mort”(振付け:Jiří Kylián イリ・キリアン)で、オーケストラ・ピットでモーツアルトの21番と23番のピアノ協奏曲の緩徐楽章を演奏します(デヴィッド・コールマン指揮 ミラノスカラ座管弦楽団)。

これは2006年にスカラ座のバレエで初めて演奏した演目の再演です。この Petite mort というのは、日本語では小さな死ということですが、ザルツブルグ音楽祭が1991年モーツァルトの没後200年を記念してキリアンに委嘱した作品です。モーツァルトの没後200年だから「小さな死」ですが、この作品は、”the sensation of orgasm as likened to death” というような言葉とも関連があると思います。始めて観た時はとっても感動しました。私の弾くモーツァルトの前にマーラーの交響曲第10番の第1楽章のアズール・バートン Aszure Bartok による新演出があり、彼女は現在最も注目されている振り付け師の一人ということです。プログラムの最後を飾るのはベジャール振付けのラヴェルのボレロ。スカラ座のエトワール、ロベルト・ボッレが5公演踊ることが既に決まっていますが、もう一人は、女性が踊る可能性があるという話をどこかで聞いたような気がします。興味深いですね。
わざわざミラノまで観に来る価値のある公演だと思います。ご検討ください。

スカラ座ホームページ:
英語 http://www.teatroallascala.org/en/season/2017-2018/ballet/mahler10-petitemort-bolero.html
イタリア語 http://www.teatroallascala.org/it/stagione/2017-2018/balletto/mahler10-petitemort-bolero.html
詳しくはコンサートページをご覧下さい。